福井赤十字病院 第9回研修医症例検討会を開催しました。
初回は初期研修医2年目 稲生 征大 先生が『研修医とともに学ぶ非専門医/医療スタッフのための帯状疱疹診療』の演題で発表しました。
複数診療科の医師、コメディカル計25名が参加されました。テーマに関する専門医として、皮膚科 長谷川 巧 先生に御指導頂きました。症例選定および全体の構成などについてはリウマチ・膠原病内科/腎臓内科 鈴木が継続して担当しております。
「非専門領域における達成目標は学生、研修医、指導医全て同じ」というコンセプトのもと、参加者全員が今回のテーマの専門医から学びました。
カンファレンスは3部構成で、1. 症例プレゼン、2. 教科書等のまとめ、3. 専門医への質問で進めました。
はじめに稲生先生から自身が経験した帯状疱疹の症例について提示がありました。デルマクイックという迅速検査について、皮膚科医が全例確認するようにしているという話を聞いて驚きました。HSVとの鑑別や、疥癬・とびひ・接触性皮膚炎などと類似する場合があり得るようです。専門医だからこそ慎重になるという場面はあると思います。紹介症例の診断を見逃すわけにはいかないので、内科でもやや多めに検査する傾向があります。次いで、教科書や診療ガイドラインに基づき、病態、診断、治療、反発型やRamsay-Huntなどの特殊型、2つのワクチン比較などについて非専門医として勉強できるラインまで解説して頂きました。
専門医への質問では、帯状疱疹の皮疹が典型的でない場合、ワクチンに関する外来での説明の実際、運動麻痺が起こり得る点などについて言及して頂きました。シンプルな症例でやや時間が余り、初期研修医から1つずつ質問を募りましたが、何とか皆さん考え出してくれました。
学会や講演会に出た際にはメモを取るのは当然として、さらに手を挙げないとしても質問を考えながら参加することを勧めます。「そんなの思い付かない」という方に対するヒントは、自分ごととして考えるということです。学んだことを臨床でアウトプットする方法をイメージしながら聞いたり、過去に経験した症例を振り返ってみて診療の質をより上げるにはどうしたら良かったかと考えてみたり…個々に質問力を高めることを意識しながら参加してみて下さい。
皮膚科を専攻した理由として、診断において”みえた”ものから考える推理ゲーム的な要素があること、同じく治療も目に見えて治るため達成感があること、など魅力を語って頂きました。
事前に『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(医学書院 2022年)を読みました。皮膚科と言えば、診た瞬間に診断がわかる職人のような専門性と思っていましたが、「臨床現場では見た目では判断できないことも多い(序文より引用)」ことを告白され皮膚科医の思考プロセスを言語化している点で興味深く読みました。長谷川先生からも見た目の診断は6-7割程度で、後は時間経過もみながら採血や病理も踏まえて考えているというお話でした。
研修医にとっても、多くが非専門医である指導医にとっても、各診療科の魅力をアピールして頂ける機会にもなっていると考えますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
文責:リウマチ・膠原病内科/腎臓内科 鈴木 康倫