初回は初期研修医2年目 竹内 征一郎 先生が『研修医とともに学ぶ非専門医/医療スタッフのための急性冠症候群(ACS)診療』の演題で発表しました。
複数診療科の医師、コメディカル計32名が参加されました。テーマに関する専門医として、循環器内科 大嶋 美華 先生に御指導頂きました。症例選定および全体の構成などについてはリウマチ・膠原病内科/腎臓内科 鈴木が継続して担当しております。
「非専門領域における達成目標は学生、研修医、指導医全て同じ」というコンセプトのもと、参加者全員が今回のテーマの専門医から学びました。
カンファレンスは3部構成で、1. 症例プレゼン、2. 教科書等のまとめ、3. 専門医への質問で進めました。
はじめに竹内先生から自身が経験した手指外傷の2症例について提示がありました。次いで、『心電図ハンター』という書籍(個人的には名著と思っています)に基づいて主に心電図の読み方について、非専門医としてどこまでできれば良いかを解説して頂きました。
専門医への質問では、非専門医にとっての心エコーの到達目標と専門医として修練の過程でどれくらいの件数に触れてきたか、ACSをコンサルトした後は救急外来ではとにかくバイタルをみて医師が横にいて欲しいなどコメント頂きました。
循環器内科を専攻した理由として、初期研修中に診療をみたこと、治療が症状改善に繋がるなど患者さんと前を向いて歩んでいけること、短期入院も多く起承転結がはっきりした診療であること、など魅力を語って頂きました。
研修医にとっても、多くが非専門医である指導医にとっても、各診療科の魅力をアピールして頂ける機会にもなっていると考えますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
(以下余談です) 膠原病内科のいなかった当院へ赴任した際、福井市医師会の会報へ「膠原病・リウマチ内科という専門性を考える」というタイトルで19ページ寄稿しました。この中で循環器内科の診療について触れた部分があり、学生・研修医にも役立つことを期待して引用してみます。
「学生時代に何度も読んだ『循環器診療スキルアップ』(CBR, 2004年) 伊賀幹二先生という循環器内科が専門で開業された方による著書です。同時期にCareNetという会社から出ていたDVDも直ちに購入し、関西弁で厳しくも明快な教育を展開される様子を食い入るように視聴しました。本書は医学教育に関して極めて重要な提言をされた名著であると考えており、理由は以下の2点です。
1つ目は、ご自身を万年研修医と呼び、「非専門医として学ぶべき目標は、学生や研修医が学ぶべき事柄のうち医療を実践する内容に関すれば同じ到達目標であるべき」とおっしゃったこと。2つ目は、非専門医にとっての目標は到 達可能なものでなければならないと明示されたことです。
開業される前は天理よろづ相談所病院で第一 線の循環器診療に携わっていた著者が、非専門医は冠動脈造影を学ぶ必要はない、と断言されたことは私にとって目から鱗でした。到達可能な目標とは言えないためです。一方で、病歴・身体診察・心電図・胸部X線写真・一般採血から総合的に疾患を推定するプロセスは非専門医であっても達成すべきとして、著書の中ではそれぞれについて明確な目標を提示されました。 循環器専門診療においてはルーチン検査である心エコーに関しても、「著明な左室収縮障害・ 著明な右室拡大・大量の心嚢水」の3つのみを到達可能な目標として書かれました。著書の出版時、学生・研修医であった自分は、左室壁運 動異常の判定ができなければならないというプレッシャーを感じていたのですが、難し過ぎるので無理、と明言して頂けたことは私自身の研修医生活を大きく変えました。
やらなくて良い・できなくても良いことを明示された代わりに、できなければならないこと(must)は指示されました。循環器領域に限りませんが、特に病歴の重要性を強調されました。研修医として心筋梗塞の症例に遭遇した場合、つい冠動脈造影やその後のICU管理に目が向いてしまいますが、伊賀先生は「確定診断がついた患者さんから病歴を再聴取することにより学ぶ姿勢」を指導されました。その結果、私は初発・急性期の患者さんの病歴にこだわるだけでなく、フォローアップカテ目的で入院してきた患者さんに対しても「最初の胸痛がどのようだったか教えて下さい」と病棟で食い下がる研修医になりました。」
拙稿を添付し失礼しました。本書で学んだ専門医・非専門医それぞれの達成目標という発想が、本カンファレンス企画の基礎になっています。個人的には非専門領域の“裾野”が広ければ広いほど目の前の患者さんに良い医療を提供できると考えていますが、やり過ぎても自分の首を絞めてしまうので、何をどこまで学ぶべきか計画を立てることは生涯学習の要諦と言えるのではないかと思います。
文責:リウマチ・膠原病内科/腎臓内科、研修推進部会 研修医養成プロジェクトメンバー、ワーキンググループ 鈴木 康倫