症例検討会

第4回研修医症例検討会

福井赤十字病院 第4回研修医症例検討会を開催しました。

初回は初期研修医1年目 坊農 真広 先生が『研修医とともに学ぶ非専門医/医療スタッフのための尿路結石診療』の演題で発表しました。

複数診療科の医師、コメディカル計26名が参加されました。テーマに関する専門医として、泌尿器科 品川 友親 先生に御指導頂きました。症例選定および全体の構成などについてはリウマチ・膠原病内科/腎臓内科 鈴木が継続して担当しております。

「非専門領域における達成目標は学生、研修医、指導医全て同じ」というコンセプトのもと、参加者全員が今回のテーマの専門医から学びました。

カンファレンスは3部構成で、1. 症例プレゼン、2. 教科書等のまとめ、3. 専門医への質問で進めました。

はじめに坊農先生から自身が経験した尿路結石症例について簡単な提示があり、次いで疫学、鑑別診断の候補と診断予測スコア(CHOKAIスコア、STONEスコア)などまとめて頂きました。今回のハイライトは尿路結石による疝痛が起こりやすい時間帯をまとめた論文の紹介でした(BMJ 2002;324:767.)。「明け方に起こりやすいこと」をデータとして証明できる以下のような図を探してみたら?、という鈴木からの問いかけをきっかけに、坊農先生自身がpubmedで検索し辿り着いたとのことです。臨床的疑問を解決するためには、疑問の種類によって教科書、UpToDate、原著論文など探す方法が異なりますが、現実には求める答えに到達するまで時間がかかることが多いです。論文を探して何時間もネットの海を彷徨うことになりがちですが、ピンポイントで以下の論文を見付けられたことは大変素晴らしいと思いました。

 泌尿器科 品川先生へは、救急でしておくべき検査、緊急callすべき状況、お勧めの処方薬などを教えて頂いた後、フロアからも質問が尽きず画像の読み方や治療・指導の実際まであらゆることをコメント頂きました。

・補足:

「専門医の先生方に極力負担をかけない」、「息切れせず長く続けられるカンファレンス」を裏のコンセプトに据えて運営しています。年度代わりでもあり、企画・運営の流れを提示します。

  1. 研修医の先生は自分の担当する1つ前の会より2週前(目安)に、まず鈴木と症例選定の相談をします。原則として、研修医自身の記憶に強く残り「深めてみたい」と感じている症例を優先しますが、当該領域の専門医をお呼びする関係上、カンファレンスとして成立しそうかどうかという点も重視して決めています。学生=研修医=非専門医が同じ目標の元に学ぶこと、その学び方の過程を共有することをイメージしていますので、common diseaseであって比較的シンプルなケースが理想的です。専門領域の学会発表とは異なる視点で選んでいます。
  2. 症例が決まれば自動的に相談すべき専門医も決まりますので、この時点で教育研修推進室へお願いして日程調整を進めます。
  3. 上述の通り、カンファレンスは3部構成で「1. 症例プレゼン、2. 教科書等のまとめ、3. 専門医への質問」としています。概要は担当研修医と鈴木とで相談しながら進め、専門医の先生方にはファクトチェックのような役割を主にお願いしています。上述の通り、比較的シンプルなケースであることもあり症例提示のパートは通常大きな問題はありません。まとめについては「非専門医としてできる限りのところまで勉強する」ことを期待しており、研修医なりのテーマを探してもらっています。Commonを深めるというのは実は難しい作業です。これまでのところ、たまたま救急外来での経験症例が続いており、林寛之先生によるレジデントノートの長期連載『Step beyond resident』に近い内容を目指して欲しいと考えています。

 質問力、という言葉があります。学生/研修医/非専門医が学び続けるためには最も重要なスキルの1つだと思います。どれだけ自分で勉強してみても、必ず専門医の壁が存在し、わからないことが出てきます。どこまでわかって、どこから先がわからないかを整理した後に初めて良い質問が生まれます。逆に言えば、ひとまず少し勉強してみない限り良い質問は生まれにくいと考えます。さらに、学会や研究会での質問をイメージする場合の私見ですが、① 参加者全員が聞きたいと(潜在的に)感じている内容、かつ② 専門医(学会・研究会では演者)が答えやすい内容が理想的です。

    例を挙げると、「この間こんな症例を経験して困ったのですが、どうしたら良かったでしょうか」は質問者本人は聞きたいかもしれませんが、おそらくフロアの多くは興味を持てません。また、専門医であっても答えに窮する、あるいは相当論文を読み込むなどして準備してこなければその場での回答が難しい質問も良くないでしょう。

    専門医の先生に負担をかけない、と書きました。専門医の先生方には簡単なスライドチェックに加え、事前の質問確認もお願いしています。一方、スライド作成は不要です。カンファレンス当日は様々な質問に答えて頂きますが、概ね「普段の診療をそのままコメント」して頂くことで十分です。余談ですが、透析専門医試験には口頭諮問が課せられており、何を聞かれるのか当日までドキドキしていましたが「高カリウム血症の対応について」という内容で、普通に診療していれば特に困りませんでした。

  新年度も研修医教育への御協力、何卒宜しくお願い申し上げます。

文責:リウマチ・膠原病内科/腎臓内科、研修推進部会 研修医養成プロジェクトメンバー、ワーキンググループ 
鈴木 康倫

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