症例検討会

第2回研修医症例検討会

福井赤十字病院 第2回研修医症例検討会を開催しました。

第2回は初期研修医1年目 松田湧生 先生が『研修医とともに学ぶ非専門医/医療スタッフのためのかぜ(のど型)診療』の演題で発表しました。

複数診療科の医師、コメディカル計 27名が参加されました。テーマに関する専門医として、耳鼻咽喉科 竹川莉菜子 先生に御指導頂きました。

「非専門領域における達成目標は学生、研修医、指導医全て同じ」というコンセプトのもと、参加者全員が今回のテーマの専門医である耳鼻咽喉科医から学びました。

カンファレンスは3部構成で、1. 症例プレゼン、2. 教科書等のまとめ、3. 専門医への質問で進めました。

松田先生からは自身が救急外来で経験した急性喉頭蓋炎の症例をもとに、『かぜ診療マニュアル第3版』という書籍の内容を中心としてまとめてもらいました。今回は特に病歴聴取が重要で、「痛みにより唾液を吐いて捨てていた」「夜間は疼痛のため眠れず、臥位になるとヒューヒューという喘鳴があった」といったred flagを見逃さず頸部側面X線写真でThumb signを確認し得たとのことです。耳鼻咽喉科 扇和弘 先生からは「患者さんの声がどのようであったか、再現してみて下さい(含み声)」という重要な御指摘を頂きました。

症例提示に続いて、かぜとはせき・はな・のどの3症状が同時に同程度存在する病態であるという定義を紹介し、更にかぜ診療の要諦はかぜ以外の疾患を除外できることであると整理されました。せき型、はな型、のど型でそれぞれ注意すべき疾患、Centor score、killer sore throatとして5つの疾患(急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Lemierre症候群、Luwig’s angina)、咽頭痛のred flag signなど基本事項をわかりやすくまとめて頂きました。コロナ禍になって迅速検査に頼り、病歴聴取や身体診察を疎かにする傾向がありますが、のどを診ただけで得られる情報も多く、やはり診療の基本に立ち返る必要があるでしょう。

専門医への質問として、1. 口腔内の診察で溶連菌感染かどうかわかるか、2. killer sore throatを疑った際の対応、3. 口を開けてもらっても咽頭が見えない場合の対処が挙がり、それぞれ明快にコメントして頂きました。咽頭観察の工夫として、挺舌してもらってガーゼでつかみ「エー」と言ってもらう、大きく息を吸い込んでもらうタイミングで観察すればはじめから舌圧子を使わなくても良いなどの提案がありました。

参加された各専門医からそれぞれ重要なメッセージがありました。産婦人科医からは、妊婦の劇症型溶連菌感染で母体死亡例があり、妊婦がかぜ症状で救急受診した場合には溶連菌検査の閾値を下げて積極的に確認して欲しいとの要望がありました。救急医からはkiller sore throatを疑って造影CTをオーダーした場合は、CT室での呼吸停止が起こり得るので必ず付いていくよう推奨されました。最後に耳鼻咽喉科 大澤陽子 先生より、耳鼻咽喉科医でも”のどがみえない”ことはあること、先生の診療ではアデノウイルス・溶連菌の迅速検査をルーチンとしていること、検体採取においては必ずしも無理をして扁桃をこする必要はなく頬粘膜をしっかりこすることでも検出可能であること等について言及して頂きました。他にも研修医・指導医を問わず多くの参加者から自由に質問・コメントがありました。

3回目は1月に虫垂炎をテーマとして開催予定です。

(参考)

 以下、かぜ診療に対する筆者の個人的な意見も含めてカンファレンスで伝えきれなかった内容をまとめます。

 「かぜ診療を制する者は初期研修を制す」というのが自身の初期研修とこれまでの教育経験を振り返ったメッセージです(私見)。3つのポイントから強調したいと思います。

1つ目は、診療態度の点です。「どうせかぜ」「こんなことで救急を受診するなんて」といった気持ちを少しでも心の底に持つと、多くの場合人生の先輩である患者さんには伝わります。医学的に正しければ診療も正しいとは限りません。本当に重篤な疾患を見逃していないか、わかりやすいベストな伝え方ができたかどうかを患者さんの表情を見ながら毎回考えましょう(かぜ診療では、抗菌薬を出さない代わりに説明を処方すると言う専門家もいます)。医師10年目も20年目も謙虚なままでいないと、学び続けることができませんしミスや患者さんとのトラブルにも繋がり兼ねません。

2つ目は診療の基本である、軽症患者さんの中に隠れた重症例を見逃さない方法を身に付けることです。今回取り上げた咽頭痛のred flagやCentor scoreといった各論の知識も重要ですし、まずはバイタルサイン、特に呼吸数です。総合診療のレジェンド 徳田安春先生による名著『バイタルサインでここまでわかる!』第2版が出たばかりなので是非読んで下さい。

3つ目は学んだ内容を診療現場でアウトプットする感覚を得やすい領域だからです。個人的な話で恐縮ですが、筆者は2006年卒で医師1年目の冬から救急当直が始まりました。それなりに内科研修を進めていましたが、準備をする中で「かぜってどう診たら良いんだろう?」という大きな疑問が生じました。今でこそかぜ診療をテーマにした医学書が複数出ていますが、当時は2つの雑誌:今月の治療 2005年12月号とレジデントノート 2006年1月号しか情報を見付けることができませんでした。そこに田坂佳千 先生という、これまた総合診療のレジェンドが寄稿されており(田坂先生は若くして鬼籍に入られ、その後日本プライマリ・ケア連合学会では田坂賞が設けられました)、目から鱗が落ちました。メッセージは明快で「かぜ症候群を病型分類して考えよう」「かぜには定義がある」というものです。今回のまとめと同様、はな型、せき型、のど型という発想です。現在出ているかぜ本のほとんどはこの分類するという考え方が根底にあります。あまりに衝撃を受けたため、周辺の文献を読み込んで100枚近いスライドを作り同期に共有し医師2年目の春には後輩にもレクチャーしました。あの時田坂先生の原稿に出会わなかったら、現在の診療能力は半減していたといっても過言ではありません。学んだことを診療現場でアウトプットする感覚を1年目につかむことができたのは僥倖で、その後どの疾患でも同じことを繰り返しています。

思い入れが強いため長くなりましたが、アウトプットを意識して学ぶことは極めて重要です。学生時代は国家試験で正しい選択肢を選べることが主なアウトプットであったと思いますが、医師になってからは昨日までの自分の診療が変わるというアウトプットを目指すべきです。1つの原稿、1つの講演というインプットをきっかけに、診療が大きく変わるという経験をこれまで何度も重ねてきました。動画教材を見たり学会・研究会へ出席する時には、その後の診療がどのように変わるか(アウトプット)を具体的にイメージしながらインプットしてみて下さい。学び方の質が格段に上がると思います。

文責:リウマチ・膠原病内科/腎臓内科、研修推進部会 研修医養成プロジェクトメンバー、ワーキンググループ 鈴木 康倫

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